愛情と矛先

君の強さは偉大なものだ

誰もお前のことなんか待っていない話

書いてて辛いブーメラン話です。あしからず。

 

かつて一緒のジャンルが好きで仲良くなった友人と
たびたび報告を兼ねて
お互いの推しの話をするのが私は好きだ。

彼女が追いかけている男性アーティストは
握手会やチェキ会が頻繁にあり、
最近人気が出てきたらしく、
以前のようにチケが取れない、助けてほしい
と協力を頼まれることが多い。
この話題になるたびに、
彼女は決まってこう言うのだ。

「彼は私が来ると思ってるから、行ってあげないと」と。

確かに、こういう事をいうオタクは多い。
なんなら、私も割とそのタイプだと思う。
でも友人の口からこの言葉を聞いて、
私たちは何を勘違いしているんだ…と思った。

確かに彼女はそのアーティストからしても太い客の方なのは間違いない。
ツアーもできる限り通って、花だって出す。
チェキ券、握手券を買い占める。
FCも友人にお金を払い、複数名義入って良席で入るのを頑張ってきたことを私は知っている。
そんな彼女なら冷静になってみればわかるはずなのに。

 

グループ自体の人気が出ている。
この時期に少しでも新規を増やしたい。
なのに今までの発売方法だと太い客が握手券を買い占める。
新規は増えない。
これでは困るから抽選にする。
本人確認書類がないと入れなくする。

 

つまりは、古参が当りにくくなっているわけではなく、
1人による買い占めを減らしているだけのこと。
それで重複当選が減っているから、
新規ばかり当っているように見える。

これは必然ではないだろうか。
それなのに当らないだの、
友人内で交換できたら、と思って、
他のメンバーにもかけたら他のメンバーだけ当った。
だのと文句をいうのは筋違いだ。
《そもそも、本命だけにかけないからそうなるんじゃないのか?
とたしなめても見たが、どうせ本命が取れないなら交換要員だけでも手に入れたいという気持ちもわからなくないので
仕方ないのかなとは思う。》


そもそも、
推しが自分のことを待っている、
という心理はどこから生まれてしまうのだろうか。

私の死んでしまった推しは(過去の記事参照)
よく「うにちゃんとずっと一緒にいられたらいいのに」とか
「一回会いに来てくれるだけで充分嬉しいよ、俺なんかに握手券使ってくれてありがとう」
なんて、依存させるような甘い言葉をささやくのが得意だった。

まるでDVを受けている彼女のようだ、と思った。
自己陶酔、とでもいうのだろうか。
彼の重い愛を受け入れられるのは自分だけ、
自分が暴力を受け止めてあげることによって相手を生かしている
と言わんばかりに
自分がお金をかけてやらないと相手は生きていけないのだ
と勘違いしているような。

クレーンゲームなどを置く位置を決めたり、
アームの強さを考える店員は
初めて入れた100円でどれだけ景品が動くように設定するか、
を大事に設定しているという。
1回目に掴んだときにある程度おおきく動いてくれれば、
もしかしたらすぐ取れるんじゃないか、
と思ってお金を払ってくれるそうだ。

どちらともに似ている気がするのだ。

それにまさにひっかかった人々が
彼はきっと私のことを好いていてくれる。
彼は自分のことを待っている、
もうすぐで彼のことが手に入る、
ような感覚になってしまうのではないだろうか。


きっと、彼女の推しは彼女のことを待ってなんかいない。
今は彼女のような太い客を量産するために、
少しでも多くの人に愛想をふりまく新規獲得キャンペーンの最中なのだ。

「新規なんかより私が来てくれた方が嬉しいでしょ」

そんなことはない。
新規の若い女の子がなけなしのバイト代で
おしゃれしてきてくれる方がずっといいはずだ。

彼にとってあなたが来てくれて嬉しい状況というのは、
券が余っているような現状であってこそ。
太い客に来てもらわなくては困るだけだ。

今書いている言葉が特大ブーメランなのもわかっているし、
解っていてもなお、オタクをやめられないのだから重症だ。


私の推しも、発売記念イベント的なものをしても
当日券が普通に出るタイプで。
複数枚買ってくれるような人が沢山いないので、
買い支えなければ、と思うことはある。
それでも、おそらく彼も私のことなんて待っていないのだ。
哀しいけれど。
認知もされていない、キャラと俳優を混同してみているような
ボサ眉の、しまむらの奥にしか売ってなさそうなチュニックを着たおばさんでも
同じお金を払ってくれるなら、その人にも同じようにきっと優しくすることはわかっている。


以前、遠い地方でのサイン会に
行くよとも全く言わずに参加したとき、
彼は登場して会場を見渡した瞬間に私の方をを二度見した。
そして私の番になったときに
「なんでいるの、もう。びっくりしたよ。」
と笑いながら肩をばしばし叩いて喜びを露わにしてくれた。
宛名はうにちゃんでいいよね?と勝手に書き始める始末で
なんて可愛いお砂糖対応なんだろうと思った。

 

待ってなくていい。
来ないと思ってくれている方がずっといい。

 

死んでしまった推しのように、
「うにちゃんに会えるのが楽しみで昨日眠れなかった」とか
吐くほど甘い言葉を言ってくれなくていい。

 

でも、できる事ならば、
私が現場に来なくなったとき、
もしかして何かあったのだろうか。と
心のどこかで考えてくれるような
そんな優しい推しであったら嬉しいな、と思う。